【事業再生】最初に何を聞いてどう判断するか。②
前回の記事(【事業再生】最初に何を聞いてどう判断するか。① - 弁護士のあたまの中|弁護士萩原貴彦のブログ)では、相談にきた会社から「最初に何を聞くか」について書きましたので、今回は「最初にどう判断するか」です。
一番最初に考えることは、どの方法をとるか、とれるかです。大きく分けて4つの方法があります。
① 私的整理~リスケ
② 私的整理~会社分割(事業譲渡)+清算
③ 法的整理~民事再生
④ 法的整理~破産
①私的整理~リスケは、主に金融機関の借入について、元本返済を一定期間猶予してもらうという方法です。利息は支払います。2009年の中小企業金融円滑化法の施行で有名になった方法ですが、それ以前から利用されていましたし、同法が終了した現在でも私的整理の王道ともいえる方法だと思います。
要は銀行の同意を得て、借入の利払いだけを行い、元本返済を一定期間延期してもらうことで、浮いた資金を商売の資金に充てるのです。銀行さえ一定期間返済を待ってくれるなら、外部からは会社が危ないなどとはわからないので、信用不安も起きず、とても良い方法です。
②私的整理~会社分割(事業譲渡)+清算は、「第2会社方式」とも呼ばれています。会社の事業(商売)を別の会社に移して新しい会社で商売を続けるのですが、そのとき借入等は元の会社にそのまま残していく方法です。元の会社は、新しい会社に商売を移した=商売自体を譲渡しているので、その譲渡代金が入ってきます。この譲渡代金を債権者に分配するのです。もし、譲渡代金で完済できない場合には、元の会社を清算したり、破産させたりして残債を債務免除をしてもらうことになります。
私的整理は法的整理よりも、事業価値*1の劣化が最小限ですみますので、理論的には債権者への弁済も増えると考えられています。
債務免除が必要な場合には有意義な手法ですが、過去に悪用されたケースが多く、債権者側、銀行側が非常に警戒する手法でもあります。
③法的整理~民事再生は、裁判所で行う手続です。民事再生手続では、一旦過去の債務の支払いを停止しつつ、事業を継続し(商売を続け)、その後稼いだお金で一定額を弁済し、残りは強制的に債務免除してもらうという手続です。破産した場合よりも多く弁済することが条件になっていますので、債権者は少しでも多くの弁済を受けられますし、最大のメリットは、事業が継続しますので、今後の商売の中で利益を上げることができることです。
④法的整理~破産も、裁判所で行う手続きです。これは破産の時点ですべての事業を停止し、会社を解体して会社の財産すべてを換金し、債権者に平等に分配するという手続です。
4つの方針を考える際には、だいたいは①→②→③の順番でできるかどうかを検討します。どれも難しいということになると④の破産となります。
なぜこの順番かというと、理論的には事業価値が劣化しないこと=弁済が最大化されること、といえるので私的整理の①②ほうが法的整理の③④よりも望ましいからです。そして①のリスケと②の第2会社方式では、債務免除がない①リスケのほうがより望ましいですし、③の民事再生と④の破産では、事業が継続する③民事再生のほうが全てを停止して解体する④破産より望ましいからです。実際的にも、破産や民事再生だと取引先に迷惑をかけることになりますし、最悪の場合は連鎖倒産が起きることになります。従業員も解雇され仕事を失い、代表者も連帯保証をしていることが多いので自宅を失ったりして路頭に迷いかねません。やはり法的整理よりは私的整理が望ましいのです。
一部の意見として、リスケや民事再生はゾンビ企業を増やすだけで企業の新陳代謝が進まない、日本経済の足を引っ張っているとするものがありますが、私は反対です。生き残る価値があるからこそ、取引先、従業員、顧客らの関係者の役に立っているからこそリスケや民事再生で事業を再生し、継続させるのです。
それに新陳代謝として新しくでてくる会社というなら、そもそもゾンビ企業程度に負けていては先が思いやられます。
方針を決めるときの具体的なポイントや考え方は、長くなりそうなのでまた別の記事にします。
*1:事業価値とは、ここでは会社の稼ぐ力とか魅力とか信用力ぐらいの意味でとらえてください。事業価値が高いほうが多く稼げますし、債権者への弁済も多くできるという意味で使われます。