弁護士のあたまの中

倒産・事業再生・事業承継・M&A・下請法・中小企業の法務を中心に活動/弁護士が何を考えているかを伝えられれば。/主に中小企業の経営者、幹部さんに。

【事業再生】最初に何を聞いてどう判断するか。①

 事業再生を取り扱う弁護士のことを「倒産弁護士」などと呼ぶことがあります。本当は「倒産弁護士」という言葉のイメージは一般向けにはあまり良くないので「事業再生弁護士」とか「再建弁護士」とか呼ばれるようになりたいですね。

 この倒産弁護士のところに会社さんから相談がくるのは、売上が減ってきたり、売掛先が飛んで焦げ付いたり、金融機関から借り入れができなかったりして、手持ち資金が乏しくなり、来月以降の支払いができなくなりそうなときです。

 多くは税理士さんや顧問弁護士さん、経営者仲間に相談して紹介を受けてご相談にきます。

 最近はみなさん、自分で聞いたりネットで調べるので、破産や民事再生といった法的手続きや、銀行借り入れのリスケなどもある程度頭にいれてくる会社さんも多いです。

 

 相談を受けたときに倒産弁護士が会社にまず最初に聞きたいことはこんなことです。

 ① 資金繰り

   資金はいつまでもつのか。

 ② 損益

   事業は利益がでているのかどうか。特に営業利益がでているか、減価償却前の段階で利益がでているか(EBITDAといいます。)が重要です。

 ③ 銀行借入

   銀行借入はいくらぐらいか。利息はどれくらいか。どんな銀行と取引があるのか(都銀、地銀、政府系、信金・信組、保証協会の有無など)。

 ④ 株主構成、役員構成

   外部株主はいるのか、オーナー株主は過半数以上をもっているか。

   外部役員はいるのか、取締役会の意思統一ができるのか。

 

 

 ①から④まではどれも重要ですが、特に①は最重要です。なので詳しくは後日書きます。

 簡単に言うと、①資金繰りは、いままで通りの通常の支払いではなく、非常時の資金繰りを考えます。不要不急の支払いがないか、遅らせられる支払いがないかどうかを検討します。資金繰りが最重要なのは、事業再生のために動ける時間がどれくらいあるのか左右されるからです。3か月あればかなりのことができます。6か月あれば相当なことができます。ただし、1か月しかないと手段がかなり限られてきます。3か月あれば民事再生でも私的整理(銀行借入リスケ)もできるのに、1か月しかないので破産しか選べないということがあります。

 また、最近は減りましたが、手形や小切手を振り出してないかは確認します。手形や小切手は待った無しなので、慎重な対応が求められます。

 

 ②の損益ですが、まずは営業利益が黒字であることが大事です。最低でも減価償却前で黒字であれば何とかなります。私がよくする例え話ですが、最初に100万円を元手に商売を1年間してみて、1年後に101万円になっていれば利回り1%ですがプラスになっています。でも99万円になっていればマイナスです。それなら商売をするより銀行の定期預金にしたほうがマシです。商売である以上、少しでも利益を生む事業でないと続けていく意味がないと思います。

 この営業利益ですが、今は赤字でも、黒字にすることが確実にできる、できる見込みがあるというのであればそれでも構いません。まずはチャレンジです。

 

 ③の銀行借入ですが、特にどんな銀行とお取引しているのか、メインバンクはどこか、保証協会はあるのかなどは大事なことなので、良くお聞きします。

 取引銀行との関係が良好な場合はいろいろご相談しやすいのですが、万が一、関係が悪化していたり、銀行に嘘をついていたりしていると難しい対応を迫られます。また、銀行によってもそれぞれのカラーがあります。例えば都銀と政府系では対応が違いますし、都銀でも銀行によって個性があります。この個性や関係値を良く見極めて、相談したり交渉したりする必要があります。

 

 ④の株主構成、役員構成ですが、これは最終的な意思決定権者は誰か?経営者が決めたことを実行できるか?をお聞きするためです。

 やはり会社が生きるか死ぬかの瀬戸際ですから、誰が会社の行く末を決めるか、決めたことを実行できるかは大事です。過去には、協力的だった外部取締役が途中で諸事情により退任したため取締役会が不安定になり、とても苦労したことがあります。そんなことにならないように、会社の最終的な意思決定は誰がするのか、できるのかを確認します。